アイスランド紀行

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ライフネット生命 スタッフ

今から2か月前の10月、遅い夏休みでアイスランドに行ってきました。日本からコペンハーゲンを経由して約24時間。日本からは遠いこともあって、あまりメジャーな観光地ではないはずなのですが、当社でアイスランドに行ったことがあるのは、なんと私で4人目でした(当社で誰も行ったことのない国を探すのはかなり難しいのです!)。
アイスランドに行ったというと「アイスランドってどこにあるの?」「何があるの?」と聞かれることが多かったので、かんたんにご紹介したいと思います。

アイスランド共和国は、北大西洋の中心に位置し「氷の島」という名前のとおり世界最大級の氷河がありますが、火山活動が活発で数々の温泉が湧き出している火の国でもあります。広さは10万3000㎢(北海道と四国をあわせた大きさ)で、人口はわずか30万人(東京都中野区くらい)。アイスランドは、大陸プレートが互いに引っ張りあっていて普通は海底にある海嶺が地表に乗り上げている珍しい島です。プレートが引っ張りあっている場所からは新しい大地が生まれています。ほかにも氷河が溶けだした巨大な滝や、20m以上も吹き出す間欠泉、空一面のオーロラなど、ダイナミックな地球の息吹を身近に感じられる場所がたくさんあります。
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この豊かな自然の力を利用して、エネルギーのほぼすべてを地熱発電と水力発電でまかなっているため、空気と水がクリーンであることでも知られています。だから、何を食べても本当においしい!アイスランドは建国以来、漁業で栄えていたのですが、豊富な漁業資源の輸出によって得られた資金を利用し、いつしか金融・不動産業が主要産業にとって換わっていきました。2008年9月、世界金融危機により国内銀行がGDPの8倍に上る負債を抱え破たん。IMFに支援を依頼し国を挙げての再建がはじまりました。あれから4年たった現在、通貨安も手伝って輸出を伸ばし、現在は順調に回復を遂げています。

実際にアイスランドの町を歩いてみると、人はまばらですが、子どもや若者の割合が多いことに気づきます。調べてみると、アイスランドでは1人の女性が生涯に産む子供の数は2.1(日本は1.27)。15歳以下の占める割合が人口の21%(日本は13%)もいて、人口の半分を24歳以下が占めています。ちなみに60歳以上の占める割合は17%と日本の半分程度。確かに多く見かけるはずです。*1
一般的に少子化の原因と言われる公式に、
・不景気 → 所得低下 → 子育て費用を出せない → 子どもを産めない
・女性の就労機会が増える → 晩婚・無産・未婚 → 子どもを産まなくなる
というのがあります。でも、アイスランドで起きていることを見ると、この公式は当てはまらないんじゃないだろうか?とふと気づきました。
数字で見てみると、現在のアイスランドの失業率は7.4%(日本は4.5%)で1人当たりの名目GDPは4万3千ドル(日本は4万6千ドル)、アイスランドの付加価値税率・所得税率はそれぞれ25%程度で、必ずしも皆余裕のある暮らしができるわけでもなさそうです。*2 また、シグルザルドッティル首相は女性として世界で初めて同性愛者として公表した首相としても有名になりましたが、働いている女性の割合は83%と世界でも高水準(日本は57%)*3です。
アイスランドも日本も、島国で資源が少なく、厳しい経済環境、男女ともに平均寿命が長く社会福祉にかかる費用が大きい点は似ています。何がこんなに違うのでしょうか。

考えるヒントは、アイスランド在住30年の日本人ガイドさんから聞いたアイスランドの福祉事情についてのお話にありました。
・アイスランドでは、14、15歳くらいから子どもを産み始めるのが珍しくない
・子どもができても結婚しない人は多い(2000年時点の婚外子の割合は65.2%、日本は1.6%)*3
・養育費については、一度国に養育費を納め、国から支給される。未納だと国が取り立てる
・大学に保育園がある
・ひとりで2つ、3つ仕事を持って働くのは普通
・男女とも年をとっても働ける間はずっと働く
・税金は高いが、その代わり老後の心配する必要はない
・老後は地位や身分に関係なく、平等に扱われる

アイスランドの例に基づいて少子化解消のカギを私なりにまとめてみると、次の4点になりました。
1.結婚してもしなくても、子どもを産み育てることに不利益がない
2.経済状況に関わらず、子どもを産み育てる支援のしくみがある
3.子どもがいてもいなくても、仕事を続けることに影響がない
4.老後の心配がないから、子育てにお金を使える
日本でもすでに色々な取り組みがされていますが、目に見える効果が上がっていないのは部分的な対応だからではないかと思います。上4つを実現しているアイスランドのように、制度が整った上で社会的・心理的にも受け入れられてこそ、数字に表れるほどの効果につながるのでしょう。

旅の話がいつのまにか少子化対策の話になってしまいましたが…それもまた旅の醍醐味。アイスランドでは来年もオーロラがよく見えるそうなので、次の旅先としても、ぜひお勧めします!
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「世界一おいしい(と言われていた)ホットドック」の店
* 1 WHO, World Health Statistics 2012
* 2 IMF, World Economic Outlook Databases (Oct 2012)
* 3 内閣府男女共同参画局 「国際統計データでみる少子化と男女共同参画」(2005年11月)

総務部 吉田

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