破壊的イノベーションを興す企業家

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

「きぎょうか」には起業家と企業家の二つがあります。両者の違いは今日でも大きく議論のあるところですが、シュンペーターという経済学者がとなえた新結合の担い手ないしはカーズナーの唱えたイノベーションの担い手が企業家であり*)、会社を興した人を起業家とする説を個人的には支持しています。シュンペーターのいう新結合とは非常に平たくいうと、既存のものを組み合わせることによって世の中にないものを生み出すことを指します。この定義のいいところは新結合を行うものは企業家であり、それは会社の中にいるのか、会社を立ち上げるのかは関係ありません。だれでも企業家になることができ、組織の中で生まれたイノベーションの担い手も説明がつきます。起業家となると会社を興さなければなりません。当社は起業家によって興された設立5年の企業ですが、企業家でもあったのではないかと個人的には考えています。

ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセン教授がイノベーションのジレンマ**)という本の中で、破壊的イノベーションという概念を紹介しています。優良企業が優れているがゆえに失敗するという逆説的な理論です。顧客の声に耳を傾ける優れた企業が顧客の声に応えていい商品を作り続けるにも関らず、簡単な商品によって市場から駆逐されてしまうのはなぜかということを多数のケーススタディをもとに導き出しています。この破壊的イノベーションを当社の起業家が興したのではないかと考えています。

イノベーションのジレンマでは次のようなステップを破壊的イノベーションが起こるプロセスとしています。
1.優れた企業が顧客の声に耳を傾けて商品を改良していく。企業は顧客と投資家に資源を依存しているために彼らの要求に応えていかなければならない。
2.商品が高度化していき、上位市場の価格の高い複雑な製品へと移行する傾向がある。一方、技術水準は市場の需要と等しいとは限らず、需要を上回ることもある。
3.従来の技術の性能を下回るが安い商品が他企業から出現し、優良企業の商品が高いたがために顧客になれなかった人たちのニーズが生まれる。しかしながらその市場は小さすぎて大企業の成長ニーズを解決できない。またそのような市場は当初存在しないために分析できず、優良企業が一般に行う確実な市場調査や綿密な計画立案を行えない。
4.技術性能の下回る商品が改善されてきて、主流市場で競争力を持ち始め、高価格高品質の商品を市場から駆逐してしまう。

例としてよく出されるのは、鉄鉱石の高炉です。高品質の鉄を作ることができるけれども高価格な高炉と、それに比すると低品質の鉄しかつくれないけれども安いミニミルという高炉の比較です。当初はミニミルでは車に使うような高品質な鉄はつくれなかったのだけれども、度重なる改良(持続的イノベーション)によってミニミルが既存技術水準に追いつき、価格設定から高品質の高炉を市場から駆逐してしまいました。

当社の商品は保険の中でも大変基礎的な商品といえます。この会社に入社する際に期待したことはこの会社であれば破壊的イノベーションを行えるのではないかということでした。破壊的イノベーションを行ったかどうかは市場すなわちお客さまが評価することになりますが当社が破壊的イノベーションを興したと評価されるように頑張りたいと思います。

*)Unterpreneur(『企業家とはなにか』)
**)The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail 
(『イノベーションのジレンマ - 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』)

リスク管理部 古森


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