わたしの先生

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ライフネット生命 スタッフ

昨年4月入社とともに始まった週2日の大学聴講生の生活も2年目の後期となりました。
わたしが講義を受けたいと思っている科目は哲学関係ですが、残念なことに現在通っている自宅近くのS大学には哲学科がありません。比較的関係する科目を選択することになり、また曜日も限定されていることからかなり狭い選択幅となります。このような状況で前期の科目の一つに「文学理論」を選択しました。

先生は英米文学を専門とする60歳前後と思われる小柄な女性の教授です。いつもスーツ姿で静かに入室し、気がつくとすでに教壇に立たれています。学生たちの話し声でざわついている中、先生はまっすぐに正面を見ながら一言も発しないで黙っています。そうしていると次第に自然と静かになり、「わたしの話よりも大事な話があるならどうぞ優先して話してください」と言います。教室は静まり返って話し声はありません。先生は講義中でも私語があるとピタリと途中で中断します。私語が止み静寂が流れると講義が再開します。居眠りの学生などはひとりもいなく緊張感に包まれています。

第1回目の講義は「火星人、故郷に葉書を送る」(クレイグ・レイン作)を題材として、火星人が表現した地球上の物は何かを考えます。先生はその中から5つの物を表現した文章を選んで、物が何かを当てる「英語の謎々」と呼んでいます。いかにわたしたちが固定観念にとらわれているか。物とその表現を通じて記号論に関するテーマを講義内容としています。先生は歩きながら「わかる人いますか」と質問します。学生が間違えると先生はとても楽しそうです。わたしは先生と目を合わせないようにうつむいていたのですが、いきなり「お父さんどうですか」と名指しされました。やむを得ず答えると「それは違うでしょ」と当然のように否定されました。結局、その日は1問も教えてもらえず次回の講義に繰り越しとなりました。わたしは家でも「謎々」の正解を懸命に考えるのですが分かりません。次の週に正解を聞くことを期待して出席すると、先生は「謎々」は忘れたかのように、違うテーマの内容で話し始めます。終了間際に「謎々」を思い出して「時間がないから正解は来週ね。もっと考えて遊んできてください。」とからかうように学生をじらします。先生は、ご自分の専攻している英米文学の研究が大好きで学生になんとかそのおもしろさを分かってもらいたいようです。その熱意と真剣さがひしひしと伝わります。先生の講義は、わたしにとって毎回とても興味深く密度が濃いものでした。

最後の講義では、シェイクスピアのハムレットに触れられ原書での英語表現のおもしろさを解説されました。今までのシェイクスピアの印象とは異なり興味を引かれ、最近ではシェイクスピアの作品を読み続けています。全作品を読了したら演劇でも観てみたいですし、さらに英文原書の対訳でも読んでみたいと思っています。こんな楽しみを教えてくださった先生にこころから感謝し、いつかまた先生の講義を聴くことができればと願っています。

お客さまサービス部 中村でした。


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