ピエロはピエロじゃないらしい

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ライフネット生命 スタッフ

もうすぐハロウィンですね。私が子どもの頃はせいぜい地域の「こども会」などでお菓子をもらうイベントがあったぐらいですが、今やその経済効果はバレンタインを超えたようです。

ハロウィン市場1220億円、バレンタイン超え 日本独自のイベントに海外からも評価ライフネット生命保険サイトの外へ移動します(新しいウィンドウが開きます)(J-CASTニュース) 


ハロウィンといえば仮装ですが、アメリカでは「謎のピエロ」(NHK NEWSWEB)が出没しており、中には武器をぶん回す事件もおきているようで、だいぶとんでもないことになっています。

なんでこんなことを書いているかというと、最近「ピエロは実はピエロじゃない」ということを知ったからです。日本人が想像する「ピエロ」は、サーカスにいるような鼻が赤くておどけた感じの道化師ですが、ああいった道化師は本来「クラウン」と呼ぶそうです。
じゃあピエロは何なのかというと、クラウンの中でも「悲しみ」の表情を浮かべた道化師がピエロだとか。目の下に涙の化粧がある場合、それはピエロです。

ここまで調べてしまうと「じゃあそもそも道化師ってなんなんじゃい」となりますよね。なりません? なりますよね。
Wikipediaによると……。

・職業としては宮廷道化師が最初
・曲芸より風刺やジョークがメインだった=笑いものとしての存在
・君主の機嫌を取れるので行政と民の中立な立場で物を言う役割があったという説もある

など色々と面白いことが書いてあります。特に3つ目の「笑いもの(なのに)中立的な立場」というのは芸以外のところでも使われそうなモチーフです。
クリストファー・ノーランの映画『ダークナイト』が好きなのですが、悪役(本映画に限ってはもはや主役)ジョーカーはまさにこうした意味での道化師です。
舞台であるゴッサムシティでは「警察:善」と「ギャング:悪」が対立しています。当然バットマンはギャングを倒すので善の側に居ると僕らは思うのですが、ジョーカーはそうした構図を崩すのです。
ジョーカーは劇中で金を奪いますが、手にいれた札束に灯油をかけて燃やしてしまいます。
ジョーカー曰く、警察もギャングもあくまで理性で動いている、警察は市の平和を守るのが仕事だからギャングを捕まえるし、ギャングは悪事を働かなきゃ食っていけない。
どちらも理性の支配下にあると。

けれどジョーカーは違う。悪は手段ではなくそれ自体が目的であり、合理性は皆無。理性とは真逆の「狂気」であり、そこに善も悪もないと。
なので理由なき正義を振りかざすバットマンもまた、善でも悪でもなく、それどころか理性の支配下にもなく、ただそれは狂気である。「お前は俺と同じだ」とジョーカーは説くのです。

善と悪という二項対立の中間に位置する「狂気」という存在。まさにかつての道化師の役割です。
面白いのは対立する2つの概念があるとき、中立になりうるのは「理性」というレイヤーを降りた全く別の次元にある概念だという点です。
逆三角形の上2頂点に善と悪、下の頂点に狂気があるイメージでしょうか(なのでマクドナルドがキャラクターにドナルドというクラウンを置いたのは、本来は企業側のマスコットにも関わらず、企業と顧客という対立する立場=クラウンになりうるという意味で上手いなあと思います)。

なので海外で話題になっている「謎のピエロ」は、武器をもって人を襲うのは論外にしても、なぜそんな現象がおきているのか、目的はなんなのか、それがわからなかったとしても、道化師が本来担っていた(とされる)役割からすると、当然といえば当然です。その存在の理由は理性の彼岸にあります。僕らが理性で理解できる領域を超えているのです。

クラウンは化粧が大変そうなので難しいですが、今年は何か仮装してみようかと思う夜でした。

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