平成最後の夏、入社一年目の夏

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

もう九月。カレンダーを見て、時が経つ早さに驚いてしまいました。
入社一年目の夏はあわただしく、あっという間でしたが、少しずつ秋に傾き始めている空気を感じている今、思い出すことがあります。

「夏」という季節が一年前まで学生だった頃とは違った意味を持ち始めていることに気づかせてくれたのは、夏の始まりに出会った通り雨でした。
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七月のある朝のことです。
四月に入社した私は、研修を終え新たに配属先での生活がスタートしたばかりでした。
太陽が照りつけるアスファルトの上を歩いて麹町に向かっていました。肌を焦がすような「熱さ」に頭がくらくらしてきます。
学生時代には、草木のにおいが濃くなり、湿度を増した空気を吸うたびに、夏の訪れにワクワクしたものです。

でも、今年の夏は、そんな詩情に浸る余裕がないくらいに、暑い。そして熱い。
あんなに好きだった夏も、今はうっとうしいくらいに思えてしまいます。

朝の七時半、開店と同時に会社の近くのカフェに突入。
始業前にカフェで勉強するのがいつもの習慣でした。ノートにペンを走らせ、電卓をたたき、根をあげそうになったらアイスコーヒーを口に含んでまた走り出す・・・

ふと、集中力が途切れた瞬間に、窓のそとを見ると、はっとしました。
肌を焦がすような太陽も、目を刺すような青空もすっかり姿を隠し、濃い霧のなかでバケツをひっくり返したような大雨が降っていました。
交差点を見下ろせる窓際という絶好の席に座っていたせいか、突然の大雨に、思わず勉強する手が止まります。
寸分狂うことなく繰り返される日常に、初夏の雨漏り。
限られた時間の中で集中しなくちゃ、という理性とは裏腹に「もうすこしだけ」と、通り雨と二人きりの世界の居心地の良さから抜けられずにいました。
そんな予期せぬなんでもない日常の美しさに出会ったときって、つい物思いに耽ってしまいがちです。
通り雨を眺めながら思いを巡らせました。
昔のように夏を愛せなくなった、わたしの心変わりについて。

学生時代、夏が来るたびに旅をしていました。目的も行先も決めず、宿はその日に決めて、どこに行くかも朝起きたら決める。
わたしは夏が好きだったというより、夏が連れてきてくれる旅の気楽さ、無計画さ、方角すらも見失ってしまうワクワク感を愛していたのでした。

以前のように夏を愛せなくなった今でも、雨に見とれて朝の勉強をサボってしまう怠惰や愚かさを「夏のせい」にしてしまうところだけは変わらないんだな、と変に納得し始めたころ、雨はやみ、出社時間の9時が近づいていました。
そうして、何もなかったかのように、全部がいつも通りの日常に戻っていきました。

あの通り雨から二か月が経ち、仮配属の身分だった私は、9月で晴れて本配属となりました。
夏を振り返って、慣れない仕事に思うようにうまくいかないことばかりだったな、と思い出します。
学生時代みたいにお気楽で、まだ見ぬ世界を夢中になって追いかけてばかりはいられない。
頭で考えているようにはスムーズに進まないことばかりで、二段飛ばしで駆け上がりたいのに、毎日一歩ずつしか進まない。

今はもどかしいけれど、それでも一歩ずつ積み上げた先の世界は、きっと旅先で見てきたどの景色とも違っているのだろう、と思うと、そんな新しい世界の入り口に立っている、ということになぜか旅が始まるときと同じようにワクワクしてきます。

秋の虫の音が聞こえてくる夜道で、そんなことをぼんやりと考えながら帰路につきました。

数理部 貴家


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